富士山噴火と火山灰による被害予測

日本を代表する名山、富士山。現在、富士山の噴火が広範囲に及ぼす被害について真剣な対策が議論されています。
富士山噴火によって、どのような被害が、どこまで起こるのでしょうか。
富士山は必ず噴火する活火山
少し前までは、富士山噴火の可能性について大きく取り扱われることは控えられていました。富士山噴火の可能性についてメディア等で話題にすると、富士山の登山客や周辺の観光産業にまで影響が出るため、というのが理由の一因とされています。
しかし、2011年の東日本大震災以降、富士山の噴火についての議論が増えてきています。ありえないと思っていた大災害を体験して、富士山もいずれは噴火する活火山であるという認識が広まってきたのかもしれません。
富士山噴火の可能性とその理由
富士山噴火の可能性はどれくらいあるのでしょうか。噴火が予想される理由について見てみましょう。
富士山はもともと定期的に噴火している活火山
実は、富士山はもともと活発に噴火している活火山です。また、富士山の年齢は若く、古富士火山から数えると富士山の年齢は10万年程度です。人間に例えると小学生か中学生程度と言われており、充分に活発なエネルギーを有しています。
産業技術総合研究所による調査では、富士山は過去5600年間で約180回噴火していると言われています。平均して30年に1回の噴火です。火山には活動期と平穏期があるため、噴火の集中する時期と沈静化している時期がありますが、それでも非常に活発な火山であることが伺えます。
日本の古典に登場する富士山噴火の記述
富士山の噴火は、日本の古典にもいくつか記述がみられています。
『万葉集』
7世紀前半から8世紀後半に読まれた歌集です。作者不詳の歌で「吾妹子に 逢ふよしをなみ 駿河なる 富士の高嶺の 燃えつつかあらむ」「妹が名も 我が名も立たば 惜しみこそ 富士の高嶺の 燃えつつ渡れ」などがあります。富士山は燃える山として、噴煙や火映現象があったことが伺われます。
『日本紀略』
西暦800年の延暦噴火について記録があります。一ヶ月間、噴煙で昼でも夜のように暗くなり、大量の火山灰が降ったと書かれています。
『竹取物語』
かぐや姫で有名な『竹取物語』は、9世紀後半から10世紀前半ころの成立とされています。物語の最後は、「日本で一番高い山に不老不死の薬をまいた、そのためその山は不死(富士)の山と呼ばれるようになり、常に噴煙があがるようになった」と締めくくられています。当時、富士山はいつも噴煙があがる山という認識であったことが伺えます。
『新古今和歌集』
12世紀の歌人である西行の歌「風になびく 富士のけぶりの 空に消え ゆくへもしらぬ わが思ひかな」が収録されています。富士山から煙が出て空に消える様子が歌われています。
このように、ここ千数百年の古典を見ても、富士山の噴火活動は珍しくない現象であったことが分かります。
次の大噴火を予感させる300年の空白
そのように定期的な噴火を起こしていた富士山ですが、最後の噴火は1707年の宝永噴火です。それ以降300年以上、噴火は起きていません。
このことから、次に起きる富士山の噴火は、マグマだまりなどエネルギーの溜まった大規模なものとなるのではないかと懸念されています。
大地震の後に富士山が大噴火する傾向がある
富士山の大規模な噴火の前後には規模の大きい地震が発生することが指摘されています。直接的な因果関係は必ずしも明らかではありませんが、両者は影響しあっていることが多くの研究で指摘されています。
貞観大噴火(864年)と貞観地震(869年)
864年(貞観6年)に富士山で貞観大噴火が起きたあと、5年後の869年(貞観11年)7月9日には三陸沖を震源地として貞観地震がおきました。貞観地震の起きた海域は、2011年3月11日の東日本大震災と同じ東北地方太平洋沿岸の沖合いに位置します。当時の陸奥国には津波が襲来し、仙台平野は海岸線から3〜4kmに渡って水没し、1,000人が溺死したと言われています。
宝永大噴火(1707年)と宝永地震(1707年)
1707年(宝永4年)12月6日の宝永大噴火に先立つ約1.5ヶ月前、10月28日に、東海道沖から南海道沖を震源域として、宝永地震と呼ばれる巨大な地震が発生しました。宝永地震は南海トラフ海域で発生した、記録に残る日本最大級の地震とされています。
安政東海地震(1854年)と富士山に起きた現象
1854年(嘉永7年)12月23日には、南海トラフ沿い東海道沖を震源域とする安政東海地震が起きました。当時この地震は「寅の大変」とも呼ばれました。
富士山に大規模な噴火は起きませんでしたが、火山活動を示唆する現象が記録されています。安政東海地震が発生した際に、ほぼ同時に富士山の頂上には黒い笠雲が現れ、同じ日には牛ほどの大きさの羽を持つ物体が舞い、八合目付近では多くの火が目撃されました。17日後の11月21日頃には、宝永山から真っ黒な煙が立ち上るのが目撃されています。さらに、その冬の富士山の積雪は少なかったという記録が残されています。
東日本大震災(2011年)と富士山下で起きた静岡東部地震(2011年)
2011年3月11日に東日本大震災が起きた、そのわずか4日後、3月15日に富士山の直下約15キロを震源とするM6.4の地震が発生しました。静岡県富士宮市では震度6強が観測されました。富士山の噴火には至りませんでしたが、2つの地震は富士山下のマグマ溜まりに噴火を誘発する影響を与えた可能性が指摘されています。
南海トラフ巨大地震と富士山噴火
近年中に起きると言われている南海トラフの巨大地震が、富士山の300年ぶりの大噴火を引き起こす可能性について懸念されています。
2025年、政府の地震調査委員会は、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率を「60~90%程度以上」と発表しています。南海トラフ巨大地震は西暦684年以降、9回以上あったことが明らかとなており、発生間隔は100~150年で、前回の地震から約80年がたちます。
震源地が近いため、南海トラフ巨大地震と連動して富士山噴火も起こりえるとして、政府や首都では早急な対策が議論されています。
時期は分からないが、富士山は必ず噴火する
以上、「もともと定期的に噴火する火山である」「300年噴火していないため地下にマグマだまりなどのエネルギーが溜まっている」「近く起きるとされる南海トラフ巨大地震との連動」などの理由で、富士山の噴火が予想されています。何年後と時期は確定できませんが、いずれ必ず富士山は噴火します。富士山の噴火は歴史的に珍しくない現象であると認識し、対策の重要性を心に留めましょう。
富士山噴火と広域火山灰の影響について
富士山の大規模な噴火はどのような被害をもたらすでしょうか。噴火現象には溶岩噴出や噴石、山体崩壊、火砕流などいろいろな現象があり、いずれも大きな被害をもたらします。
ここでは、近年特に懸念されている、広範囲にわたる火山灰被害を中心に富士山噴火の影響について見ていきます。
火山灰の広がる範囲と積もる量
富士山噴火時の降灰予想エリア
内閣府の富士山ハザードマップ検討委員会が発表する富士山噴火時の降灰予想エリアがあります。
富士山噴火時の降灰予想エリア

https://www.bousai.go.jp/kazan/kouikikouhaiworking/index.html
#4 各地の降灰予想
- 山梨:南東部に10cm〜30cm
- 静岡:富士山の東で30cm〜50cm、御殿場市付近で100cm
- 神奈川:全域に4cm〜30cm、小田原で20cm、相模原で0.8cm、横浜で12cm
- 東京:全域に0.2cm、新宿区で0.3cm、東京湾海上で8.5cm
- 千葉:全域に0.2cm〜0.4cm、市原市で4.5cm、成田市で1.2cm
- 埼玉:広範囲に微量
- 茨城:ほぼ全域に微量
- 栃木:南部に微量
なお、風向きによっては関東全域にさらに多く広がり、東京で4cm、新宿区で10cmとなるケースも試算されています。
降灰はどれくらいの期間続くのか
火山の噴火活動は1日で終わることもあれば数年続くこともあり、降灰期間は確定できません。雲仙・普賢岳の噴火活動は4年半続きました。桜島のように定期的な噴火・降灰が続く火山もあります。
富士山の最後の噴火である1707年の宝永噴火は15日間活動が続きました。そのため、内閣府の試算では、広範囲に影響が出る噴火活動は15日間、つまり約2週間程度を想定した対策が検討されています。
降灰は2週間程度で終わったとしても、火山灰の除去にはさらに数日・数週間かかる可能性があります。その間、交通網や社会インフラ、物流には影響が続くと考えられます。
火山灰が引き起こす影響
富士山噴火による大量の火山灰はどのような影響をもたらすでしょうか。人体や企業活動、社会インフラ、都市機能など、各方面にもたらす影響を見ていきましょう。
人体への影響
富士山噴火で影響のある首都圏とその近郊は日本最大の人口密集地のため、人体への火山灰対策は必須となります。
火山灰の正体は小さなガラス片であり、目の網膜や呼吸器官を傷つける恐れがあります。1707年の宝永大噴火の際には、火山灰で呼吸器を患い、咳をする人が多数出たと記録されています。
火山灰が目に入ると異物感、痛み、かゆみ、充血、結膜炎を引き起こす可能性があります。
呼吸器系では鼻の炎症と鼻水、のどの痛み、気管支炎やぜんそくの悪化があります。
一般的ではありませんが、火山灰で皮膚が刺激されるケースもあります。炎症やかゆみ、また引っかき傷からの二次感染などです。
降灰中はマスクやゴーグルによる目と呼吸器官の防護、肌が敏感な方は露出を防ぐようにする必要があります。
また、衣服についた火山灰が着くと室内に持ち込まれます。屋内で安心してマスクやゴーグルを外したところに火山灰がやってきたりするので、移動中はレインコートを着けたり、入り口で火山灰を落とすなどの対策が必要です。
建物への影響
火山灰は雪よりも重く、水を吸うと雪の10倍の重さになると言われています。建物の上の10cmの火山灰に雨が降ると、100cm=1メートルの雪が乗っているのと同じ重さになります。そのため、降灰量の多い地域では木造住宅の建物倒壊の恐れが指摘されています。
内閣府の「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」では、富士山噴火の降灰で影響の出る首都圏では木造家屋の数が少なく、2〜3cm程度の降灰では倒壊の危険は少ないため、自宅や堅牢な建物への避難が推奨されています。
目安として、火山灰堆積30cm以上で木造家屋の倒壊、5cm以上で室外機に不具合が出るとされています。
内閣府:火山防災対策推進のための資料
https://www.bousai.go.jp/kazan/shiryo/index.html
富士山噴火による都市機能の麻痺
富士山噴火で最も懸念されているのは、重要機能が集中した首都圏の都市機能の麻痺です。首都圏は300年前の宝永噴火の時代に比べ、現代は高度な交通網、電気機器やコンピュータなど電力系の使用、政治や企業等の本部機能の集中があります。これらは300年間経験のない火山灰によって、大きな影響が出ると予想されています。
交通網への影響
富士山噴火によって降り続ける火山灰は、都市圏の交通網へ甚大な影響を及ぼします。
一般道路・高速道路
火山灰は滑りやすいため、高速道路は使用停止、通行規制、速度制限が行われます。また、一般道も同じく通行規制や速度制限が行われます。高速道路が使えずに一般道を走る車両が増え、かつ通行規制や速度制限のため、道路は通常より混雑、遅延状態が続くと予想されます。車での通勤や物流に大きな影響が出るでしょう。
内閣府の検討会では、「乾燥時10cm以上、降雨時3cm以上の降灰で二輪駆動車(※)が通行不能。」と発表しています。富士山噴火によって3cm以上の降灰が予想される神奈川県全域では、雨天時の道路は運転できない可能性があります。また、四輪駆動車でも、火山灰が30cm以上積もると通行不能になります。
※二輪駆動車はバイクのことではなく、2WDの乗用車のこと。価格が安く燃費が良いため、普段使われる多くの自動車が二輪駆動車です。
また、火山灰降下中は視界不良になるため、無理した運転は交通事故を引き起こします。事故が多発すれば、ますます道路が渋滞することは避けられないでしょう。
ちなみに、防災科研の実験によると、車にチェーンタイヤをつけても、火山灰に対しては走行能力が向上しません。
鉄道・新幹線
火山灰によりレールが滑るため、微量の降灰でも地上路線の運行が停止する場合があります。
過去の噴火で生じた鉄道の被害事例としては、0.5cm以下の降灰でも電車の脱線、踏切ポイントの操作不安定、信号誤作動の懸念による運行停止が起きてます。地上路線は降灰が止まり線路上の灰が除去されるまで、運行の困難な状態が続きます。
地下鉄は走行そのものに影響はありませんが、地上の路線や道路が使えないことから利用者が増え、大変な混雑が予想されます。内閣府の検討会では「需要増加や車両・作業員の不足等により運行停止や輸送量の低下が発生」と発表しています。
新幹線はしばらく運行停止が予想されます。特に富士山の近くを通る東海道線への影響は大きいでしょう。
航空機
飛行機などの航空機は火山灰を吸い込むと、灰が内部で固まり、エンジンが停止する恐れがあります。そのため、待機中に火山灰が存在する空域は迂回等の借地が取られます。また、滑走路は0.2cm以上の降灰で除灰が必要になるため、除灰作業が行われるまで滑走路は利用できません。
羽田空港、成田空港は、富士山噴火の降灰中は飛行機の発着ができないため、利用できません。火山灰降下がおさまっていても、滑走路の除灰作業を終えるまで使用できないため、航空便には大きな影響が出るでしょう。
船舶
内閣府の検討会では「降灰中の視程低下時の基準による航行停止が想定」としています。また、軽石等が降る場合は、冷却水管やエンジンフィルタの目詰まりの可能性があるとされています。
また、船舶の入港や出港ができても、火山灰による電力系統への影響があった場合、停電エリアの港湾で電力で稼働する荷役機械の使用ができなくなります。
東京湾は富士山噴火によって大量の降灰(8.5cm)が予想されているため、船舶への影響は大きく、物流の遅延はまぬがれません。
※参考:内閣府:首都圏における広域降灰対策検討会
https://www.bousai.go.jp/kazan/shutokenkouhai/index.html
ライフライン:電気、ガス、水道、通信網への影響
微小の火山灰が機器の内部に入り込んだ場合、電気系統はショートを起こします。現代ではガスや水道も電気系統で管理されているため、火山灰はライフラインにも大きな影響が予想されています。
電気・電力への影響
火山灰が送電施設に0.3cm以上積もり、雨が降ると、ショートによって広範囲の停電が予想されます。場所によっては電線ケーブルの断線や電信柱の倒壊も考えられます。
首都圏では原発の停止により火力発電に多くを頼っておりますが、火力発電所は降灰の多い東京湾に多く所在します。そのため、噴火15日後には、電力の供給力が最大42%低下するという試算もあります。電力供給力が低下した場合、医療施設を除いた企業や家庭では電気の使用制限が起きる可能性があります。
電気系統への影響は、ガス、水道、通信網など他のインフラにも大きな被害をもたらします。
#4 ガスへの影響
富士山噴火による降灰は、都市ガスとLPガスの両方に影響が考えられます。
都市ガスは供給システムに制御装置やポンプの稼働に電力を使います。発電所などが火山灰の影響で停電した場合、こうした設備も停止または予備電源での稼働に変わる可能性があります。また、ガス供給施設内においても火山灰が精密機器に侵入した場合、誤作動や故障を引き起こす可能性があります。
LPガス(プロパンガス)を使用している地域では、噴火の降灰による交通渋滞の影響で、、ガスボンベの輸送が遅れる可能性があります。
水道への影響
富士山噴火による水道への影響は、大きく3つあります。
1つは、火山灰による河川の水質悪化と浄水機能の停止です。内閣府の研究によると、大量の火山灰が原水に混ざると、火山灰に付着している火山ガスによってpHの低下やFeやMnなどの重金属元素の溶出等がおき、水質が悪化する可能性があると指摘しています。また、過去の噴火では大量の降灰でろ過装置の目詰まりが起きた事例があります。こうした状況で浄水処理が追いつかず、一時的に上水道の供給停止が起きる可能性があります。
2つ目は、電力系統で停電が起きた場合、自家発電設備のない浄水場やポンプ場などは停電が起きてストップすることです。
3つ目は下水の問題で、火山灰が下水管に流れると、そのまま流れてくれません。やっかいなことに、火山灰は水に濡れると固くなり、下水管内に付着して、詰まりが生じる可能性が指摘されています。下水管が詰まると逆流してあふれてくるため、トイレや洗濯、お風呂などの生活用水が流せないので使えない、工場等でも排水ができないなどの事態が考えられます。
通信網への影響
富士山噴火は通信網にどのような影響を及ぼすでしょうか。
まず、火山灰が基地局の通信アンテナについた状態で雨が降ると、通信を阻害する可能性があります。また、局舎の換気口を通じて火山灰が内部に侵入して電気通信設備の電子回路に付着し、設備が故障する可能性もあります。
火山灰の影響で電力が停止した場合、基地局では非常用電源に切り替わります。しかし、停電が長期間に及んだ場合、非常用電源の燃料が切れ、通信サービスが停止する可能性があります。
富士山噴火による企業や工場へ影響
以上のように、火山灰による人体、交通網、ライフラインへの影響から、企業や工場にも大きな被害が出ることが予想されます。
火山灰による社員への影響
社員の健康被害
火山灰の程度によっては、健康に影響を及ぼすこともあります。目や呼吸器系統に影響があるため、マスクやゴーグルの使用が必要になります。建築現場やガソリンスタンドなど、外で仕事に従事する社員には、特に配慮が必要です。
出勤できない、または時間通りの出勤・退勤が困難、営業先に行けない
降灰中、また道路や線路に火山灰が残っている状態では、車や電車の交通規制と渋滞発生が予想されます。その期間中は社員の出勤や退勤が通常通りにできない可能性があります。営業時間や勤務時間の変更、リモートワークなどの対応が求められます。
また、営業先への訪問も同様に、回数や時間の短縮を検討する必要があります。
飛行機や新幹線が止まり、東京近郊に出張した社員が帰ってこれない場合もあります。海外出張の社員が東京に戻ってこれず、現地で待機か、他の飛行場へ迂回して帰国する可能性もあります。
物流の遅延または停止で、ものが届かない、送れない、不足する
交通網への影響は、そのまま物流への影響となります。製造用の部品が届かない、商品が仕入れできない、または非常な遅延が発生するなど、製造や販売へ大きな被害が発生します。東京は陸・海・空のいずれも富士山噴火時に影響が出るため、多めの在庫確保や、製造拠点や配送拠点の移転などの事前対応が求められます。
オフィスや建物、設備への影響
停電や電力の使用規制、ガスや水道の停止、通信網の停止または障害
電気が止まった場合、ほとんどの企業や工場は稼働が難しくなります。電力の他、ガスや水が止まると、工場にも影響が出ます。通信網の障害は、インターネットを使ったサービスを提供する会社で被害が出るところもあります。
災害時、ライフラインの復旧は優先して取り組まれます。早急な復旧を期待したいところですが、富士山噴火による大量かつ広範囲の降灰は近代社会で経験がないため、手探り状態です。
火山灰による設備、電子機器の故障
火山灰が建物内に侵入した場合、電子機器、精密機器の故障を引き起こす可能性があります。メーカーに修理を依頼するにしても、全体が火山灰被害で仕事の遅延が発生している場合は、復旧に時間がかかります。建物内や設備のある空間に、火山灰が侵入しない対策が必要になります。
取引先の営業停止による経営危機や連鎖倒産
自社の火山灰対策もさることながら、お取引先が富士山噴火の影響で営業停止、または供給停止になった場合、自社の経営にも大きな影響が出ます。一時的な停止であればまだしも、重要な取引先が噴火停止後も復旧の見込みがないほどの被害の場合、最悪のケースでは連鎖倒産の可能性もあります。小規模な事業者の場合は災害対策が後手に回ることも多いため、自社の対策のみならず、他社の状況も含めた対策を考慮する必要があります。
富士山噴火の農業や農作物への影響
広範囲の火山灰は農業事業者にも被害をもたらします。
作物への影響
火山灰が葉に積もることで、光合成が低下し、作物の発育に影響が出ます。ビニールハウスで覆っている場合でも屋根に灰が積もることで、日照が不足する状態になります。
稲作においては、水田に灰が堆積することで水質が変わり、生育に影響が出る可能性があります。
また、最終出荷の生産物にも灰が着くと商品価値が失われるため、除灰作業に大きな手間が取られます。
機器や設備への影響
ビニールハウスに火山灰が積もると太陽光を妨げるため、日照不足によって光合成低下を招きます。また、火山灰は簡単に流れ落ちてくれず、雨が降ると重量が増します。火山灰の量によってはビニールハウスが破損する可能性があります。
コンピュータなど精密機器を使っている場合、火山灰の侵入により電子回路がショートする可能性があります。また、電力系統の停止で停電し、機器が動かないこともあります。
農機具は通常の精密機器より粉塵に強く作られていますが、火山灰のような細かい物質が降り続けることを想定しているとは限らないため、保管やメンテナンスに注意しなければ故障を引き起こす可能性があります。
流通網への影響
火山灰は道路、線路、船舶、航空機へ大きく影響が出ます。富士山噴火時は首都圏方面の物流への影響が深刻になります。
まとめ
300年来噴火していない、富士山噴火。その間に発達した近代社会と、都市機能が集中した首都圏への影響は、日本がまだ体験していない災害となって被害をもたらすかもしれません。現在、国や各自治体、企業をあげて富士山噴火の影響のシミュレーション、防災、減災対策が議論されています。
参考資料
- 内閣府:大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ
https://www.bousai.go.jp/kazan/kouikikouhaiworking/index.html - 内閣府:富士山火山防災対策協議会
https://www.bousai.go.jp/kazan/fujisan-kyougikai2/index.html - 内閣府:火山防災に関する普及啓発映像資料
https://www.bousai.go.jp/kazan/eizoshiryo/tozansha_shisetsu.html - 東京都:Tokyo富士山降灰特設サイト
https://www.fujisan-kouhai.metro.tokyo.lg.jp/ - 防災科研:降灰路面で車両がスタックするメカニズム
https://www.bosai.go.jp/sp/info/news/2023/20240123.html