十勝岳の噴火警戒レベル3 いま何が起きているか
ここに書いた内容は、2026年9月28日時点の気象庁の発表にもとづいています。十勝岳は9月12日に噴火警戒レベルが3へ引き上げられ、9月28日のいまも変わっていません。夏には小規模な噴火も何度か起きています。「そろそろ噴火するのでは」「行っても大丈夫か」と検索してたどり着いた方も多いと思います。
レベル3は、火口からおおむね3キロの範囲で大きな噴石に警戒する、という意味です。いつ噴火が起きるかは、気象庁もはっきりとは言い切っていません。まずは、いま分かっていることを公的な発表だけで整理していきます。
いま十勝岳はどうなっているのか
9月12日午前9時30分、札幌管区気象台は、十勝岳の噴火警戒レベルを2の火口周辺規制から3の入山規制に引き上げました。登山者向けには、火口からおおむね3キロの登山道に入らない、という意味です。理由は、8月17日以降、山の近くを震源とする揺れの大きな火山性の地震が増えていることです。
引き上げにあわせ、気象庁は火口からおおむね3キロの範囲で大きな噴石への警戒と、風下側で火山灰や小さな噴石が遠くまで流されて降るおそれを呼びかけています。対象は富良野市、美瑛町、上富良野町、南富良野町、新得町の5市町です。
このレベル3は、いまも変わっていません。9月28日午後4時の解説情報でも、3月以降の地殻変動と4月以降の二酸化硫黄の放出量増加が伝えられ、火口からおおむね3キロの範囲に影響する噴火の可能性が高まっている、と締めくくられています。同じ発表によると、9月25日の現地調査では、1日あたり1000トン前後の二酸化硫黄が出ていることが確かめられました。次の解説情報は10月2日午後4時ごろの予定です。
さかのぼると6月18日にレベル2へ引き上げられ、そこから小さな噴火が何度か起きています。7月22日、8月5日、8月6日に62-2火口付近でごく小規模な噴火が発生し、いずれも短時間で止まりました。噴煙は最高で火口縁上900メートル、振子沢噴気孔群でも稜線上700メートルに達し、夜には火映と呼ばれる発光も観測されました。
レベル3とはどういう意味か
噴火警戒レベルは、火山活動の状態を5段階で表す仕組みです。十勝岳の判定基準では、レベル3は火口からおおむね3キロの範囲に影響する噴火が発生、または可能性が高まった場合に発表され、レベル2はおおむね1.5キロになります。
レベルが下がるときの決まりも同じ判定基準にあります。レベル3の基準を満たさなくなってから、だいたい1か月たった段階でレベル2以下に引き下げる、とされています。
噴火警戒レベルの5段階の意味は、噴火警戒レベルの一覧にまとめています。噴火警報と噴火速報の違いは、噴火警報・噴火速報とはで説明しています。
レベルの意味を表にすると、次のようになります。
| レベル | 呼びかけの言葉 | 十勝岳でのめやす |
|---|---|---|
| 5 | 避難 | 居住地域まで到達するような大きな噴火が切迫または発生 |
| 4 | 高齢者等避難 | 居住地域に被害を及ぼす噴火の可能性が高まっている |
| 3 | 入山規制 | 火口からおおむね3キロ以内に大きな噴石が飛ぶ噴火が発生、または予想される |
| 2 | 火口周辺規制 | 火口からおおむね1.5キロ以内に大きな噴石が飛ぶ噴火が発生、または予想される |
| 1 | 噴火予報 | 判定基準では、レベル2の基準を満たさなくなってから概ね1か月で引き下げ |
出典:2〜4行目・1行目の引き下げの決まりは気象庁「十勝岳の噴火警戒レベル判定基準」、5行目は気象庁「噴火警戒レベルの説明」による
青い池・白金温泉・望岳台へ行ってよいか
白金温泉と青い池がある白金地区は、町の発表では規制の対象外で平常どおり営業しています。望岳台は道路を通れますが、その先の登山道は入山規制の範囲に入ります。十勝岳温泉へ向かう道道966号は望岳台ゲートから先で通行規制され、十勝岳温泉・吹上温泉の施設の営業は各施設へご確認ください。登山道は、望岳台から火口方向の避難小屋・山頂側がリーフレットの地図をもとに当店はレベル3の規制範囲に入ると読んでおり、美瑛岳側は公的な一覧がありません。
美瑛町は9月12日の時点で、今回の規制は火口周辺だけのもので、白金地区や居住地区への規制ではない、と発表しています。白金温泉地区は平常どおり営業しており、火山情報に注意しながら通常どおり過ごしてください、とも案内されています。
青い池は白金地区にあります。美瑛町の観光案内には、十勝岳の麓の温泉地として知られる白金地区には、「白金青い池」や「白ひげの滝」などの幻想的なスポットがあり、と書かれています。青い池も白金地区にあるので、規制の対象ではないという美瑛町の説明は青い池にも当てはまります。
この通行規制は、9月25日の情報でも変わっていません。
気象庁のリーフレット地図では、十勝岳温泉と吹上温泉は居住地域より火口に近い「特定地域」として描かれています。特定地域とは、居住地域より早めの対応が要る場所という意味で、町や気象庁の案内を見て、指示があればすぐ動けるようにしておくとよいでしょう。
十勝岳温泉や吹上温泉の施設が、いま営業しているかは美瑛町全体の発表からは分かりませんでした。出かける前に宿泊先や施設に直接たずねておくと安心です。
望岳台には、噴石から身を守る避難シェルターがあり、非常用の食料や発電機を備えています。冬は閉鎖され、令和7〜8年は12月1日から4月下旬まで使えませんでした。今年の予定は美瑛町の案内で確認しましょう。開いている時期は、トイレと避難スペースが24時間使えます。白金温泉地区の火山砂防情報センターは噴火や泥流に備える拠点で、冬は火曜休館です。
美瑛岳側など3キロ外側は公的な一覧がありません。計画の前に、十勝岳火山防災協議会、美瑛町「十勝岳について」、上富良野町「防災対策」で確かめましょう。富良野市・南富良野町・新得町は防災担当へ。噴火時の動き方は登山中に噴火が起きたらへ。
そろそろ噴火してしまうのか
「そろそろ噴火するのではないか」と気になっている方も多いと思います。ただ、いつ噴火するかにはっきり答えている発表は見当たりませんでした。気象庁の言葉は、火口からおおむね3キロの範囲に影響する噴火の可能性が高まっている、というところまでで、予告とは別のものです。
地震の増え方や地面のふくらみ、火山ガスの量といった観測データは、いまの活発さを示す手がかりです。ただ、その数字が噴火の日付を教えてくれるわけではありません。次にいつ状況が変わるかは、そのつど発表される情報を待つほかない、というのがいまの正直なところです。
噴火したら何が起きるのか
十勝岳では、過去に何度か噴火が起きています。その記録を見ておくと、噴火という言葉が指す幅の広さが分かると思います。
もっとも被害が大きいのは1926年5月24日の噴火です。中央火口丘の一部が崩れ、積もった雪をとかして泥流となり、上富良野と美瑛の2村が埋まりました。死者・行方不明者はあわせて144名、負傷者はおよそ200名です。次に大きいのは1962年6月29〜30日の噴火で、噴煙は12000メートルに達し、死者5名、負傷者11名を出し、降灰は知床や南千島の方面まで及びました。
この2回の噴火のあと、気象庁は十勝岳を常時観測火山として見張り(概要ページ)、町は望岳台に避難シェルターを置き(美瑛町・防災施設)、白金温泉には火山砂防情報センターが置かれています(同)。気象庁は現在、地震計や監視カメラなどの観測機器を設置し、関係機関と監視・観測を続けています。
1988年12月から1989年3月には、水蒸気噴火とマグマ水蒸気噴火があわせて28回起き、火砕流や火砕サージ、泥流をともないました。12月18・19日の小噴火では東北東へおよそ150キロまで降灰し、1989年にはおよそ140キロ先まで達したと記録されています。もっとも近い噴火は2004年2月で、ごく小規模でした。
十勝岳は、山体崩壊や熱水の噴出をともなうと積雪の期間が長いために泥流が起きやすい、という特徴が気象庁の資料に挙げられています。1926年の大正火口や1962年の62-2火口は、いまも噴気の活動が盛んです。今回が同じ規模になるとは限らず、規模までは分かりませんでした。
何を見て判断すればよいのか
状況は日々変わっているので、出かける前や登る前にそのつど新しい発表を確かめてください。気象庁の解説情報は10月2日午後4時ごろに次が出る予定で、そのあとも状況に応じて発表が続きます。
火口のようすを見たい場合は、気象庁の監視カメラのページで、白金模範牧場と避難小屋南東の2地点からの映像が公開されています。雲で見えない日も多いので、映像だけでなく解説情報の文章とあわせて見るとよいでしょう。
降灰の心配がある方には降灰予報という仕組みがあります。噴火警戒レベル3のあいだ、気象庁は3時間おきに、その先18時間で噴火が起きた場合の灰の方向と量を見積もって発表しています。方角は日によって変わるため、その日ごとに確かめるのが確実です。
より詳しい避難計画や地図は、上富良野町の防災のページに十勝岳火山避難計画や十勝岳火山防災マップ、十勝岳で起こる火山災害現象として公開されています。滞在先がどの区域かを地図で確かめておくと、いざというとき慌てずにすみます。
旅行中に見るなら、気象庁の十勝岳のページで解説情報とレベルを、美瑛町の「十勝岳について」で規制や施設の状況を、降灰予報の見方で灰の方角を確認できます。
灰が降ったらどうすればよいのか
灰が降る風下では、洗い方や干し方は火山灰が洗濯物についたときの洗い方と干し方に、マスクやゴーグルの選び方は火山灰マスク・ゴーグルの選び方にまとめています。
十勝岳は、いまも観測が続いている山です。ここに書いた内容もレベルが変わればそのつど古くなります。気象庁や地元の町の発表を確かめながらお過ごしください。
参考
気象庁「火山活動の状況(十勝岳)」噴火警報(火口周辺)令和8年9月12日09時30分
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/report/activity_info/108.html
確認日:2026-09-27
気象庁 火山の状況に関する解説情報(十勝岳・第27号)令和8年9月28日16時00分/XML原文
https://www.data.jma.go.jp/developer/xml/data/20260928070008_0_VFVO51_016000.xml
確認日:2026-09-28
気象庁 十勝岳の火山活動解説資料(令和8年8月)札幌管区気象台
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/report/monthly_v-act_doc/sapporo/26m08/108_26m08.pdf
確認日:2026-09-27
気象庁「十勝岳の噴火警戒レベル判定基準」(令和3年3月26日現在)
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/filing/level_kijunn/108_level_kijunn.pdf
確認日:2026-09-27
気象庁「十勝岳の噴火警戒レベル」リーフレット(平成20年12月16日運用開始・令和3年12月改訂)
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/filing/level/PDF/level_108.pdf
確認日:2026-09-27
気象庁「噴火警戒レベルの説明」(表のレベル5「避難」の呼び方とめやすの文言の出典)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kazan/level_toha/level_toha.htm
確認日:2026-09-28
美瑛町「十勝岳について」
https://www.town.biei.hokkaido.jp/emergency/tokachidake.html
確認日:2026-09-27
美瑛町「防災施設」
https://www.town.biei.hokkaido.jp/emergency/facility.html
確認日:2026-09-27
美瑛町「美瑛の観光情報」
https://town.biei.hokkaido.jp/tourism/
確認日:2026-09-27
気象庁「十勝岳 有史以降の火山活動」
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/sapporo/108_Tokachi/108_history.html
確認日:2026-09-27
気象庁「十勝岳」概要(観測機器=地震計・傾斜計・空振計・GNSS・監視カメラ)
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/sapporo/108_Tokachi/108_index.html
確認日:2026-09-27
気象庁「監視カメラ画像」(十勝岳)
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/obs/volcam/volcam.php?PS=12/43.465/142.67
確認日:2026-09-27
気象庁 降灰予報(定時)の見方
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kazan/qvaf/qvaf_guide.html
確認日:2026-09-27
上富良野町「防災対策」
https://www.town.kamifurano.hokkaido.jp/index.php?id=73
確認日:2026-09-27
上富良野町「十勝岳火山防災協議会」(2026年9月7日開催・9月15日からの事前防災対策着手を記載)
https://www.town.kamifurano.hokkaido.jp/index.php?id=6431
確認日:2026-09-27
上富良野町 十勝岳火山防災マップ(令和6年3月)PDF
https://www.town.kamifurano.hokkaido.jp/contents/01soumu/0110soumu/bosai/valcanodispre/202403map.pdf
確認日:2026-09-27
更新日:2026-09-28
著者:日本防災士機構認定 防災士(上地)
運営:シーノン株式会社