富士山噴火で国の方針は?家庭は「自宅にとどまる」が基本

富士山が噴火したら、首都圏の自宅はどうなるのでしょうか。お子さんの学校や、通院している家族のことも気になります。国は方針を出していますが、資料の言葉は難しく、家庭で何をすればよいのかは読み取りにくいものです。ここでお伝えするのは、国のガイドラインが対象にしている、火山から離れた首都圏などの話です。富士山に近い地域には、別に富士山火山避難基本計画があります。

国の基本方針は、「できる限り降灰域内に留まって自宅等で生活を継続する」こと、つまり灰が降る範囲にとどまって、自宅で暮らし続けることです。ただ、灰が30センチ以上積もって木造家屋が危ない場合などは避難が必要とされ、備蓄は1週間分に、可能ならそれ以上が望ましいとされています。まずは、「自分の地域の計画はどこで見られる?」の表から、お住まいの都県のページを1つ開いてみましょう。

国の資料は、家庭に何を求めている?

国の資料の名前は「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」で、令和7年(2025年)3月に内閣府がまとめました。国や地方公共団体(都道府県や市区町村など)が、各地域で降灰対策を検討するときの参考になるよう、考え方や留意点をまとめた資料、と書かれています。自宅にとどまるのを基本にした理由の1つは、降灰には「緊急的・直接的な命の危険性は低い」という特徴があることです。

灰の量で、家庭の過ごし方はどう変わる?

灰の厚さに応じて、被害の様子は4つの「ステージ」に分けられ、住民の行動も書かれています。ステージ2と3は、灰の量は同じで、電気や水道などの被害の大きさで分かれます。

ステージと灰の量 被害の様子(国の資料) 住民の行動(国の資料)
1(微量から3センチ未満) 鉄道などが止まったり、電気や水道に影響が出たりするかもしれない 自宅で、ふだんどおり暮らす
2(3センチ以上30センチ未満) 歩く以外の移動は制限される。電気や水道の被害は比較的小さい 備蓄を使って自宅で暮らす。状況により、命に危険が及ぶ人は、早い段階で、医療機関にかかれる地域へ移る
3(3センチ以上30センチ未満) 歩く以外の移動は制限される。電気や水道の被害は比較的大きい 備蓄を使って自宅で暮らす。備蓄だけでは難しくなったら物資の調達を考え、電気や水道が戻った地域へ移ることも。命に危険が及ぶ人はステージ2と同じ
4(30センチ以上、または降灰後の土石流の危険) 雨が降ると木造の家が灰の重みで倒れるおそれ。または土石流の危険 噴火の直後は自宅か頑丈な建物にとどまる。木造の家が危ないなら頑丈な建物へ、土石流の危険なら危険の少ない地域へ

出典:内閣府ガイドライン本文 PDF p.11・p.22〜23。表の言葉は、当店でやさしく言いかえています。確認日 2026-10-02。

表の「歩く以外の移動は制限される」と、早めに移る人の話は、のちほどの通院や介護の節でつなげます。最初に書いた30センチ以上の木造家屋は、ステージ4の、雨が降ったときの話です。

東京ではどのくらい積もる想定?

東京都の特設サイトのトップページには、見出しに「東京都への影響が最も大きくなるモデルケースの場合」とあり、その下の箇条書きに「多摩地域をはじめ、区部の大部分で2~10㎝程度以上の降灰が発生」とあります。「程度以上」とあるので上限とは読めず、あくまで検討のための一例で、風向などで変わる、という注つきです。

お住まいが30センチの側か手前かは、この数字だけでは言えません。同じサイトの富士山の噴火を知るのページには、降灰分布図と降灰の可能性マップがあり、地図で降灰の範囲を確かめられると書かれています。区市町村ごとの数字は、確かめた範囲では見つかりませんでした(2026年10月2日)。

備蓄は何日分?マスクは何枚?

備蓄は、地震と同じ準備に、防塵マスクなどの降灰対策用品を加えるのが望ましい、とされています。日数は、「首都直下地震対策では1週間分の備蓄が推奨されている」けれど、降灰では可能であればそれ以上が望ましい、とされ、宝永噴火では噴火が2週間続いたことが添えられています。「それ以上」が何日なのかは、国の資料に書かれていません(2026年10月2日に確かめた範囲)。

水や食料、トイレなど家で過ごす備えや、灰の掃除と捨て方は、防災士に12問聞きましたに答えがあります。

マスクについて、国の資料の図にある例は、一人1日あたり1個で、屋外で作業しない人は通常のマスクで代えることも考えられる、という注つきです。当店の防災士の目安は、防塵マスクで、家族4人なら20枚です(国の数字ではありません)。1週間分をもとに、7日分を4人で掛け算すると28枚ですが、外出しない人や外出しない日もあるため、それを考えて20枚としています。人数が違うときは、国の例の一人1日あたり1個を、人数と日数に合わせて考えてみてください。選び方はマスク・ゴーグルの選び方にあります。

灰が降ったら、学校はどうなる?

国の資料の「学校教育における対応」という項目は、学校教育を継続することが望ましいが、状況に応じて適切に対応する、としています。ステージ1や2では、ライフラインの状況を見て通学を判断し、休校ならオンラインなどで学ぶ機会を確保することが望ましいとあります。

学校の項目は、ステージ3や4について「ライフラインが停止し、生活維持が困難な状況となり、学校教育が一時中断する」とし、生活が落ち着いたあとの再開に向けて対応する、としています。

何センチで休校、という数字は、国の資料に書かれていません。保育園、幼稚園、学童は、ガイドライン本文を文字で検索しても、その語が出てきませんでした(いずれも2026年10月2日に確かめた範囲)。通っている園や学童には、降灰のときの連絡を聞いておくと心強いでしょう。国の資料が学校の管理者に学びの継続の検討を求めていることから考えた、当店の提案です。

通院や介護が要る家族がいるときは?

通院して人工透析を受けている人や、介護サービスが必要な人は、降灰で社会の動きが落ち込むと命に危険が及ぶ人の例とされ、国の資料は、降灰量がより少ない段階から、医療機関にかかれる地域へ移動する必要がある、としています。別の箇所には「早い段階で」ともあります。「より少ない段階」が何センチなのかは、資料に書かれていません(2026年10月2日に確かめた範囲)。降灰が進んで動きにくくなる前に早めに、ということだと、当店は受け止めています。

歩いての移動については、国の資料の「徒歩による移動の考え方」に、ほかの移動手段が使えず、移動が必要な場合は、徒歩での移動を検討する、とあります。降灰のときは、視界の低下や地面の滑りやすさ、健康など、安全に配慮して行う必要がある、とされています。移動先の具体名は、確かめた資料にありませんでした(2026年10月2日)。

噴火の前に、遠くへ避難しておくべき?

Yahoo!知恵袋には、こんな質問が投稿されていました。

富士山噴火前に一時避難する県で他場所よりは安全で最低限の仕事もありおすすめのところはありますか?
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14317069274
投稿日:2025年7月4日

国のガイドラインは、「予測の不確実性から、噴火前から社会活動を著しく制限することは現実的ではない」としています。おすすめの避難先は、内閣府のガイドライン本文を2026年10月2日に確かめた範囲では、はっきり書かれたものが見つかりませんでした。

いつ噴火するかは、分かっている?

気象庁の火山活動解説資料の令和8年8月分には、「火山活動に特段の変化はなく、静穏に経過しており、噴火の兆候は認められません。」とあります。いつ噴火するのかは、はっきり書かれたものが、2026年10月2日に確かめた範囲では見つかりませんでした。

自分の地域の計画はどこで見られる?

まず、お住まいの都県の行を1つ開いてみましょう。ここまでの国のガイドラインは火山から離れた首都圏などの話で、富士山に近い地域には、別に富士山火山避難基本計画があります。山梨県と静岡県の行は、富士山の火山防災の協議会(関係する機関が集まって話し合う会)のページです。

都県 開くページ 書かれていること
東京都 降灰特設サイト 降灰の影響と備え
神奈川県 火山の防災対策 降灰は県内全域に影響の可能性
埼玉県 火山灰対策 降灰の想定と備蓄
千葉県 降灰対策の指針 令和8年3月に指針を改定
茨城県 地域防災計画 降灰対策の章あり
栃木県 火山対策編 「富士山」の語なし
群馬県 地域防災計画 「富士山」は表の注に1か所
山梨県 協議会のページ ハザードマップと協議会の資料
静岡県 協議会のページ 協議会の資料

出典:各都県の公式ページ。栃木県と群馬県は文字検索の結果。確認日 2026-10-02。

栃木県や群馬県のように富士山の降灰が載っていないときは、市区町村の防災の窓口に、降灰への備えの計画があるか聞いてみてはいかがでしょうか。降灰対策は地方公共団体も検討するもの、という国の資料から考えた、当店の提案です。

富士山の噴火警戒レベルの決まりは?

気象庁の富士山のリーフレット(令和6年3月)には、「火山活動活発化の過程でレベル2は発表しない」とあり、レベル1のあと、レベル2を経ずにレベル3になる場合があります。レベル3は「入山規制、観光客等は帰宅」で、富士山火山避難基本計画(令和5年3月)でも、観光客や登山者は避難ではなく「帰宅」とされています。レベルの意味は噴火警戒レベルの一覧に、登山の方は登山中に噴火が起きたらにあります。

いま進んでいる検討は?

国の動きを追いたい方向けです。

検討(いつ) 決まっていること まだ分からないこと
内閣府と東京都の協議会(第1回は2026年3月25日) 令和8年度中に第2回を開く方針 改定版は確認できず
山梨・静岡・神奈川の協議会(第17回は2026年7月16日) 降灰対策の作業部会と検討委員会を設置 完成したものは確認できず
気象庁の新しい火山灰の情報(報告書は2025年4月25日) 火山灰警報(仮称)などの導入を提言 運用開始日の記載なし
防災庁(政令の公布は2026年9月30日) 防災庁設置法の施行は2026年11月2日と決まった 降灰対策との関わりは、ページに書かれていない

出典:内閣府・静岡県・気象庁・内閣官房の公式ページ。確認日 2026-10-02。

家族で話しておきたい3つのこと

週末にでも、ご家族で次の3つを話してみましょう。国の資料の備蓄、通院や介護、学校の話から考えた、当店の提案です。

  1. 灰が降っても家で過ごすことになったら、備蓄は何日分あるか。
  2. 通院や介護が欠かせない人がいるか。いるなら、灰が降って通えなくなったときの扱いを、通院先や介護の事業所に聞いておけるか。
  3. お子さんの学校や園から、降灰のときの連絡がどう届くか。

会社の防災担当の方は、法人向けの備蓄品リストをご覧ください。

参考

内閣府「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」本文(令和7年3月)
https://www.bousai.go.jp/kazan/shiryo/pdf/honbun.pdf
確認日:2026-10-02

内閣府 火山防災対策推進のための資料のページ(ガイドラインの公表は令和7年3月28日。改定版の掲載がないことの確認)
https://www.bousai.go.jp/kazan/shiryo/index.html
確認日:2026-10-02

気象庁「富士山 噴火警戒レベルに応じた防災対応」リーフレット(令和6年3月)
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/filing/level/PDF/level_314.pdf
確認日:2026-10-02

富士山火山避難基本計画(令和5年3月・山梨県掲載)
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/108739/1hinankeikaku.pdf
確認日:2026-10-02

内閣府「首都圏における広域降灰対策具体化協議会」ページ
https://www.bousai.go.jp/kazan/kouhaikyougikai/index.html
確認日:2026-10-02

内閣府 具体化協議会(第1回)議事要旨(令和8年3月25日)
https://www.bousai.go.jp/kazan/kouhaikyougikai/pdf/gijiyoshi_1.pdf
確認日:2026-10-02

内閣府 具体化協議会(第1回)資料1 開催趣旨(令和8年3月25日)
https://www.bousai.go.jp/kazan/kouhaikyougikai/kyougikai1kai/pdf/shiryo1.pdf
確認日:2026-10-02

静岡県 富士山火山防災対策(協議会の掲載ページ・更新日2026年7月17日)
https://www.pref.shizuoka.jp/bosaikinkyu/sonae/kazanfunka/fujisankazan/1030022.html
確認日:2026-10-02

富士山火山防災対策協議会 第17回 資料1-1(令和8年7月16日)
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/022/kyogikai17_shiryo11.pdf
確認日:2026-10-02

山梨県 富士山火山防災対策協議会(ページ更新日2026年3月19日)
https://www.pref.yamanashi.jp/kazan/fujisankazanbousai.html
確認日:2026-10-02

東京都「Tokyo富士山降灰特設サイト」
https://www.fujisan-kouhai.metro.tokyo.lg.jp/
確認日:2026-10-02

東京都「Tokyo富士山降灰特設サイト」富士山の噴火を知る(降灰分布図・降灰可能性マップの節)
https://www.fujisan-kouhai.metro.tokyo.lg.jp/fuji-eruption/
確認日:2026-10-02

神奈川県「火山の防災対策」(ページ更新日2026年7月15日)
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/j8g/bousai/1_3235_9_13.html
確認日:2026-10-02

埼玉県「火山灰対策」(掲載日2026年1月21日)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0402/kazanbai.html
確認日:2026-10-02

千葉県「「富士山等の噴火に伴う降灰対策に関する対応指針」の改定について」(更新日2026年4月21日)
https://www.pref.chiba.lg.jp/bousai/saigaitaisaku/kouhai/kouhaishishinr8.html
確認日:2026-10-02

茨城県「茨城県地域防災計画」
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/bousaikiki/bousai/bosaikeikaku.html
確認日:2026-10-02

茨城県地域防災計画 風水害等対策計画編(R8.3改定。「火山噴火降灰対策計画」の章を確認)
https://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/bousaikiki/bousai/documents/3_2025chiikibousaikeikakufuusuigaihen.pdf
確認日:2026-10-02

栃木県地域防災計画 火山対策編(全29ページ。「富士山」の語は0件)
https://www.pref.tochigi.lg.jp/kurashi/bousai/kekaku/documents/20260603105303.pdf
確認日:2026-10-02

群馬県地域防災計画(令和8年3月・全453ページ。「富士山」の語は降灰量の表の注の1か所のみ。PDF通しページ320)
https://www.pref.gunma.jp/uploaded/attachment/698045.pdf
確認日:2026-10-02

気象庁 報道発表 令和7年4月25日「広域に降り積もる火山灰対策に資する火山灰予測情報のあり方(報告書)」の公表について
https://www.jma.go.jp/jma/press/2504/25b/kouikikouhaikentou_20250425.html
確認日:2026-10-02

気象庁 同 報告書(概要)
https://www.jma.go.jp/jma/press/2504/25b/houkoku_gaiyou.pdf
確認日:2026-10-02

気象庁 降灰予報の説明(新しい火山灰の情報が載っていないことの確認)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kazan/qvaf/qvaf_guide.html
確認日:2026-10-02

気象庁 富士山の火山活動解説資料(令和8年8月)
https://www.data.jma.go.jp/vois/data/report/monthly_v-act_doc/tokyo/26m08/314_26m08.pdf
確認日:2026-10-02

内閣官房 防災庁設置準備室 防災庁設置法の情報のページ(防災庁設置法は令和8年法律第61号・2026年7月17日公布。施行期日を定める政令は令和8年政令第303号・2026年9月30日公布)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/index.html
確認日:2026-10-02

防災庁設置法の施行期日を定める政令(令和8年政令第303号。本文は「防災庁設置法の施行期日は、令和八年十一月二日とする。」)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260925/shiryo2.pdf
確認日:2026-10-02

防災士に12問聞きました(当店の記事。マスクの目安は6問目)
https://hun-ka.com/blogs/contents/bousaishi-qa
確認日:2026-10-02

Yahoo!知恵袋(質問の投稿)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14317069274
投稿日:2025年7月4日/確認日:2026-10-02

更新日:2026-10-02
運営:シーノン株式会社

執筆者:上地忍(シーノン株式会社 代表取締役・日本防災士機構認定 防災士)
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